ベルギーのシュルレアリスト、画家ルネ・マグリット(René Magritte)
現在ポンピドゥーセンターにて、ベルギー人画家ルネ・マグリット(1898-1967)の企画展を行っています。シュールレアリスムを代表とする作家である彼の作品は、日常の現実を一風変えてだまし絵的な技巧を用いて表現したり、非現実的な風景や物体と掛け合わせたり、鑑賞者は彼の作品を見ると奇妙な感覚に陥るとともに、何を表現しているのかがわからず困惑してしまうのです。彼の作品では絵画に描かれているイメージとタイトルの内容がかけ離れていることもあり、鑑賞者は絵画鑑賞を通してマグリットの意図した哲学的なメッセージを探ります。
「イメージの裏切り」
La Trahison des Images (The Treachery of Images)
マグリット1929年作、ロサンゼルス現代美術館所蔵作品です。リアルに描かれたパイプの下に「これはパイプではない」という一文が書かれています。こんなにも写実的に描かれたパイプがパイプではないとは・・一体どういうことなのでしょうか?マグリット曰く、パイプのイメージを描いているだけで、これは煙を出す本物のパイプではない、絵でしかない。ということなのだそうです。絵画は言葉と同様、現実を写し取るものではない、として言葉とイメージの表現を追求しました。哲学者ミシェル・フーコーは1973年に出版した書籍「これはパイプではない」の中でこの作品についてを論考しました。